国際連合日本代表部 公使 久島直人の声明
議題7 先住民問題に関する常設フォーラムにおける
先住民族の権利に関する国際連合宣言の履行について
ニューヨーク2013年5月22日

議長、
2006年の調査によると、約24,000人のアイヌの人々が日本の北海道に住んでおります。
日本政府は、アイヌの人々の尊厳が完全に尊重され、その地位が促進される社会の実現を目指し、包括的な政策進展のための努力をして参りました。

先住民族の権利に関する国連宣言の採択後の2008年には、日本の国会が全会一致で、アイヌ民族のために包括的な政策を確立すること並びにアイヌ民族を先住民族とすることを求める決議を採択しました。これら決議に応答することは、同時に政府がアイヌの人々が宗教や文化の独自性だけでなく固有の言語を持つ日本の北部周辺、とりわけ北海道に住んでいた先住民族であることを認めたことであります。

2009年7月、アイヌ代表を含む数名のハイレベルの専門家で構成される「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」は、アイヌ文化の活性化や職業の促進、教育を含めた様々な分野での特定の施策並びにアイヌ政策のいくつかの基本的原則を推奨した報告書を提出しました。これらの勧告は、国内やアイヌ民族の現況だけでなく、国連宣言に関連して作成されており、日本のアイヌ政策の基礎を提供しております。

第一の柱である日本の現行政策は、アイヌ文化の推進や啓発であります。政府は、教員研修や学習教材の開発を通したアイヌ語の教育をはじめ、伝統的な儀式や工芸の促進の支援など、様々な企画への支援を供給しています。

第二の柱は、アイヌの人々の生活水準の向上であります。
政府の財政支援により北海道は、奨学金を含めた教育支援をはじめ、雇用への支援、農業や漁業関連の近代化、中小企業の産業振興などの施策を実施して参りました。

さらに、2009年報告書が政策立案過程にアイヌ民族の見解を反映するために設立した懇談会が提案したものであることから、同年に、政府は「アイヌ政策推進会議」を設置しました。推進会議は、数名のアイヌ代表者を含む14名で構成する権威の高い内閣官房長官の私的諮問機関です。それ以来、継続的に懇談会における協議を行っております。

私は、2012年7月に推進会議が審議した2つのプロジェクトについて言及したく思います。はじめに、「民族共生の象徴空間」と称されるアイヌの歴史と文化に捧げるナショナルセンターを設置する提案であります。北海道のポロト湖畔に位置するこのセンターは、アイヌ民族と次世代の育成によって文化伝承に貢献することが想定されます。
また、各種展示会、体験プログラム、文化交流を通して、国内外からの訪問者への理解を促進します。

第2の話題は、北海道外のアイヌの人々の実質的な生活状態に関する全国規模調査であります。2011年に推進会議に提出した報告書は、北海道外のアイヌの人々の所得水準が全国平均よりも低いことを明らかにし、不安定な雇用が判明し、大学進学の割合が低いということなど、北海道のアイヌの人々と同様の実情であります。

この現実に対応し、推進会議の作業部会は、このような高等教育と雇用安定の支援だけでなく、都市部における彼らの交流やコンサルティングのための場所を設置する具体的な提言を具申しました。政府は現在、これら勧告に基づいて効果的な施策の策定に取り組んでおります。

議長、
日本は、すべての人々の多様性が尊重される社会を実現するためにアイヌの人々と密接に協力していきます。日本はまた、国連と国際社会の他の関係機関と協力して、世界の先住民族が直面する多くの事柄に取り組む努力を惜しまず専心しております。
議長、ありがとうございます。