アイヌ文化振興法の概要
「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律
(略称 アイヌ文化振興法)」の概要

改正 平成9年5月14日
平成11年12月22日
法律第52号
法律第160号
第1 法律の趣旨
アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化(以下「アイヌの伝統等」という。)の置かれている状況にかんがみ、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発(以下「アイヌ文化の振興等」という。)を図るための施策を推進することにより、
アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、あわせて我が国の多様な文化の発展に寄与すること。
第2 本法の概要
  1. アイヌ文化の定義
    アイヌ文化とは、アイヌ語並びにアイヌにおいて継承されてきた音楽、舞踊、工芸その他の文化的所産及びこれらから発展した文化的所産をいうこと。
  2. 国及び地方公共団体の責務
    (1)国は、アイヌ文化の振興等を図るための施策を推進するよう努めなければならないこと。
    (2)地方公共団体は、当該区域の社会的条件に応じ、アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に努めなければならないこと。
  3. 施策における配慮
    国及び地方公共団体は、アイヌ文化の振興等を図るための施策を実施するに当たっては、
    アイヌの人々の自発的意思及び民族としての誇りを尊重するよう配慮するものとすること。
  4. 基本方針
    内閣総理大臣は、アイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本方針を定めなければならないこと。
  5. 基本計画
    政令で定める都道府県は、基本方針に則して、アイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本計画を定めるものとすること。
  6. 指定法人
    国土交通大臣及び文部科学大臣は、アイヌ文化の振興等に関する業務を行う民法法人を、全国を通じて一に限り、指定することができること。
  7. 付則
    北海道旧土人保護法及び旭川市旧土人保護地処分法の廃止等について定めること。
第3 施行期日
公布の日から起算して三月を越えない範囲内で政令で定める日から施行

  • アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律案に対する付帯決議(衆議院・参議院内閣委員会)

政府は、アイヌの人々が置かれてきた歴史的、社会的事情にかんがみ、アイヌ文化の振興等に関し、より一層国民の理解を得るため、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

  • アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現に資するため、アイヌ文化の振興等の施策の推進に当たっては、アイヌの人々の自主性を尊重し、その意向が十分反映されるよう努めること。
  • アイヌの人々の民族としての誇りの尊重と我が国の多様な生活文化の発展を図るため、
    アイヌ文化の振興に対しては、今後とも一層の支援措置を講ずること。
  • アイヌの人々の人権の擁護と啓発に関しては、「人種差別撤廃条約」の批准、「人権教育のための国連十年」等の趣旨を尊重し、所用の施策を講ずるよう努めること。
  • アイヌの人々の「先住性」は、歴史的現実であり、この事実も含め、アイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発の推進に努めること。
  • 現在、行われている北海道ウタリ福祉対策に対する支援の充実に、今後とも一層努めること。